私は『お坊さん』をしています。
私は今まで多くの人から「お坊さんて◯◯なの?」といろんな質問をされました。
皆さん同じような疑問をお持ちのようで、質問される内容というのはだいたい決まっているんですよね。
そこで、本記事では『お坊さん』に関するよくある質問をまとめ、それぞれに対して私なりに答えてみました。
最後まで読むと『お坊さん』に対する理解が深まりますのでチェックしてみてください。
この記事を書いている私『ちょっき』は、お坊さん歴29年以上。お坊さんに関する裏話や、人間関係の悩みを解消する内容について発信しています。
最近は、仏事よりも『お坊さん』の方に関心が集まっている
近年では【仏教離れ】が急速に進んでいます。
そのせいか、以前よりも『亡くなった人を供養する』という意識が希薄になってきています。
しかし一方で、『お坊さん』に対しては興味を持ってくれる人が多いんです。
最近のお坊さんは、従来のように《お葬式》や《法事》ばかりするのではなく、
- テレビ出演
- 本を出版
- YouTubeで活動
- ブログやSNSで発信
など、さまざまな形で世間に露出しています。
お坊さんを目にする機会が増えているため、お坊さんへの関心も集まりやすくなっているのでしょう。
ところが、『お坊さん』について詳しく紹介している本やウェブサイトはあまりないんですよね。
そのため、お葬式後の食事の席などでは、いろんな人から「お坊さんて◯◯なんですか?」とさまざまな質問をされます。
そして、質問される内容はだいたい同じようなことなんです。
『お坊さん』に関するよくある質問
ここからは、本記事のメインテーマである『お坊さん』に関するよくある質問を紹介していきます。
結婚をしてもいいの?
まずは最も多い質問が「お坊さんは結婚をしてもいいの?」というものです。
結論を言うと、今の日本のお坊さんは結婚をしても問題ありません。
日本のお坊さんの多くが結婚をしており、子供もいます。
じつは、お坊さんの結婚については明治時代に国が認めており、今ではお坊さんが妻帯するようになりました。
お坊さんの結婚についてはここでは全部伝えられないので、興味があれば別記事を読んでみてください。
《関連記事》:お坊さんは結婚をしてはいけないのか。お寺はどうやって継承されるの?
肉や魚は食べないって本当?
お坊さんに対する質問で2番目に多いのが「お坊さんは肉とか魚を食べないって本当?」という質問です。
お答えすると、お坊さんは毎日のように肉や魚を食べています。
仏教には【生き物を殺してはいけない】という重要な教えがあります。
そのため、食用として殺された動物や魚をお坊さんは食べることができません。
しかし、お坊さんは平然と肉や魚を食べています。一体なぜなのでしょう?
じつは、ある条件を満たしていれば、お坊さんでも肉や魚を食べることができるのです。
その条件とは、
- 【見】:その動物が殺されるところを見ていない
- 【聞】:その動物が、自分に供されるために殺されたと聞いていない
- 【疑】:その動物が、自分に供されるために殺されたという疑いがない
の3つです。
仏教ではこの3つの条件を満たした肉を『三種の浄肉』と呼んでいます。
私たちお坊さんは、この『三種の浄肉』があるおかげで肉や魚を食べることができるのです。
お坊さんの肉食については別記事で詳しく解説していますので興味があれば読んでみてください。
《関連記事》:お坊さんは肉を食べてます!お坊さんなのに、なぜ肉を食べるのか。
休日(定休日)はあるの?
質問の中でも意外と多いのが「お坊さんは休日ってあるの?」という質問です。
お坊さんというのは、休日らしい休日がありません。
しかし、お葬式や法事などの予定が入っておらず、なおかつ来客がないときは休日に近い状態になります。
また、【友引】の日にはお葬式が入らないため、休日に近い状態になりやすいです。
とはいえ、法事については友引の日でも行いますので、法事が入っていれば休日にはなりません。
また、近年では平日にも法事が入るため、一週間を通して休日がないこともよくあります。
逆に、法事などが入っていなければ一週間ずっと自由に仕事ができますし、休むこともできます。
このように、お坊さんには決まった休日は無いのですが、だからといって、ずっと仕事をしているわけでもないのです。
テレビを観るの?
小さなお子様と話をしていると「お坊さんはテレビを見るの?」と質問されることがあります。
はい、お坊さんはしっかりテレビを見ていますよ。
お坊さんは信者さんと様々な会話をするために、日頃からいろんな情報を取り入れておく必要があります。
本来ならお坊さんは修行に専念し、お経の情報以外は必要ないのかもしれません。
でも、実施のところ、それだと信者さん達とのコミュニケーションがとれません。
そのため、いろんな媒体から情報を得ています。
インターネットなどの情報でも構いませんが、お坊さんの年齢によってはテレビから情報を得ることも多いです。
正直に言うと、情報を得ること以外にも、単純に娯楽としてテレビを見ることもありますけどね。
テレビゲームはするの?
もしかすると【お坊さんは修行ばかりをしている】というイメージがあるのか、「お坊さんはテレビゲームをするの?」という質問もあります。
これは人によって違いますが、テレビゲームをするお坊さんもたくさんいます。
ちなみに私はほとんどテレビゲームをしません。
お坊さんはずっとお経を読んだり、掃除をしたり、勉強ばかりをしているわけではありません。
お坊さんも息抜きをしたいので、その手段としてテレビゲームをすることもあるでしょう。
スマホやパソコンは持ってる?
本当に疑問に思って聞いているのか、あるいは意地悪で聞いているのか「お坊さんはスマホとかパソコン持ってるの?」と質問されることがあります。
えぇ、お坊さんの多くがスマホもパソコンも持っていますよ。
今あなたが読んでいるこの記事も私がパソコンで作成したものです。
今のお坊さんはスマホやパソコンを駆使して情報を集め、それを活かしていかなければお寺を維持することは難しいです。
情報収集についてはテレビで情報を得ることもありますが、おそらくあなたと同じようにスマホやパソコンを使って情報を得ることの方が多いです。
また、現代のお坊さんは、お寺の行事などについて積極的に発信し、たくさんの人に閲覧してもらうことで宣伝や集客をしなければなりません。
ですから、若いお坊さんにはSNSも多用している人もいます。
このように、多くの人たちと同じように、私たちお坊さんにとってもスマホやパソコンは必要不可欠なものです。
なぜ『お坊さん』になったの?
昔から「どうしてお坊さんになったの?」という質問をよくされます。
この質問に対して、多くのお坊さんは【実家がお寺だったから】と返答するでしょう。
一般的なお寺はいわゆる《世襲制》で受け継がれていきます。
そのため、小さい頃から「お前は将来ここを継いでいくんだよ。」というふうに洗脳されます。
しかし、お寺というのは世襲制で継承される必要はありません。
実際に住職さんの子供がお寺を継がず、代わりに近隣のお寺のお坊さんが継承するケースもあります。
とはいえ、お寺にお墓を持ってる人たちにとっては、昔から知っている人が継承してくれた方が安心なんですよね。
なので、現在のとことは世襲制を採用しているお寺が多いです。
お坊さんにも『出世』とかあるの?
ときどき「お坊さんも出世をするの?」という質問をされます。
お坊さんも出世をすることがありますよ。
とても大きなお寺などではたくさんの坊さんが在籍しており、普通の会社のように部署も分かれています。
そして、同じように部署ごとに係長、課長、部長などの役職もあるのです。
そのようなお寺に勤めているお坊さんは、会社員と同じように徐々に出世していることもあるでしょう。
ちなみに、『出世』というのは仏教の言葉ですが、本当の意味は役職の階級が上がることではありません。
『出世』の本当の意味は文字通り俗世を出ること、つまり【仏門に入ること】を意味します。
お坊さんをやめたいと思ったことはないの?
よく年輩の方に「お坊さんを辞めたいと思ったことはない?」と聞かれます。
私はお坊さんを辞めたいと思ったことはありませんが、他のお坊さんはどうか分かりません。
お坊さんは何かと制限の多い生活をしなくてはいけません。
そして、お坊さん自身だけではなく、その家族も一般家庭にはないさまざまな制限のもとで生活を余儀なくされます。
そのため、お坊さんの生活が息苦しくなり、他の仕事に就いてお坊さんをやめてしまう人も実際にいます。
悩みは誰に相談するの?
お坊さんといえば『いろんな相談にのってくれる』というイメージがありませんか?
なので、「お坊さん自身が悩んだときは誰に相談するの?」と聞かれることもあるんですよね。
お坊さんも人間なのでさまざまな悩みがあります。
仏教には人間の悩みを解決してくれるいろんな教えがありますので、それらを参考にすることも多いです。
しかし、現実的に仏教だけでは解決できないようなことは、家族や友人あるいは専門家に相談をします。
友人はどんな人達?
お坊さんと聞いて【世間から離れている人】とイメージする人も多いでしょう。
そのせいか、「お坊さんってどんな友達がいるんですか?」という質問をされることもあります。
私たちお坊さんの友人は、同業のお坊さんだけではなく、幼馴染の友人、学生時代の友人、社会に出てからできた友人など、年齢も職業もいろんな方々とお付き合いがあります。
ですから、あなたと同じようにいろんな友人がいて、特定の業種の人達とだけ付き合うようなことはありません。
なぜ『坊主頭』にしなきゃいけないの?
お坊さんといえば丸刈り、つまり『坊主頭』のイメージがありますよね。
お坊さんの特徴といえば『坊主頭』なので「なぜお坊さんは坊主頭にするの?」という質問はよくされます。
お坊さんが坊主頭にする理由は【俗世を離れて修行に集中する】という意思の表れです。
つまり、修行に髪の毛はジャマだから短く切ってしまう、ということですね。
しかし、じつは本当は現実的な理由があるのです。
お坊さんが坊主頭にする本当の理由については、別記事で詳しく紹介していますので興味があれば読んでみてください。
《関連記事》:お坊さんが坊主頭にする理由。坊主頭のメリットとデメリット。
早起きしなきゃいけないの?
テレビなどで【お坊さんが朝早く起きて修業を始める】というシーンがありますよね。
そのイメージが強いせいでしょうか、「お坊さんはやっぱり早起きなんでしょ?」と聞かれることがあります。
早起きするかどうかは正直言って坊さん次第ですね。
修業僧時代は朝早く起きて修行をするのが義務です。
しかし、修行が終わって自分のお寺に戻ると、後はお坊さんごとの生活スタイルに委ねられています。
ですから、朝早く起きて掃除をしたりお勤めをしたりするお坊さんもいれば、しっかりと睡眠をとるために一般の方と同じような時間に起きるお坊さんもいます。
ちなみに私は・・・後者です。
収入はどこから得ている?
多くの人は【お坊さんの収入】に対して興味があるようです。
そのため「お坊さんで税金がないんでしょ?お坊さんの収入ってどこから出ているの?」という質問があります。
お坊さんの収入は、主にお葬式や法事のときに納めてもらう《お布施》です。
納めてもらったお布施に対しては税金がかかりません。
しかし、お坊さんはお布施をそのまま懐へ入れるわけではなく、お寺から給与としてお金をもらいます。
そのため、お坊さんはお寺からもらった給与に対して税金が発生します。
これは、会社員が会社からもらった給料に課税されるのと同じことです。
ですから、お寺の収入には税金がかかりませんが、お坊さん個人の収入にはしっかり課税されているため《坊主丸儲け》なんていうことはありません。
《関連記事》:お坊さんは税金を払わない?税金免除で坊主丸儲けって、そんなワケないでしょ!
お寺に住まなきゃダメなの?
よく友人から「お坊さんはお寺に住まなきゃダメなのか?」と聞かれました。
お坊さんは必ずお寺に住むというわけではありません。
ほとんどのお坊さんはお寺に住んでいますが、お寺以外の場所に住んでいるお坊さんもいます。
多くの人が誤解をしていますが、お寺に建っている家というのは住職の持ち家ではありません。
お寺の敷地内に建っている家は、あくまで【お寺の所有する家】です。
つまり、お坊さんはお寺の家を借りて住んでいるだけなんです。
ですから、自分で家を所有し、そこへ住みながらお寺に通っているというお坊さんもいます。
副業をしちゃダメなの?
お坊さんといえば【ずっとお寺の仕事をしている】というイメージがありませんか?
正解ですが、それは少し前までの話です。
先ほど言いましたように、近年では仏事に対する意識が薄くなっているので、法事などの収入が激減しているのです。
そのため、お坊さんとしての収入だけでは足りず、『副業』をしているお坊さんが増えています。
じつは、お坊さんの70%が《お坊さんの収入》だけでは生活できず、平日は他の仕事をして土日祝日だけお坊さんの仕事をするという人が多いのです
なので、最近ではお坊さんの仕事の方が副業になっている人が増えています。
殺虫剤は使うの?
仏教には、『生き物を殺してはいけない(不殺生)』という厳しい教えがあります。
それをご存知の方から「坊さんは殺虫剤なんて使わないんでしょう?」と聞かれることがあります。
大変申し訳ございません、お坊さんも殺虫剤を使っていますよ。
気温が高くなると、いろんな虫が出てきますよね。
虫には害虫もいるため、それが出てきたら対処をしなくてはいけません。
自分が我慢をするだけなら殺虫剤を使う必要はありませんが、お寺には多くの方がお越しになります。
お寺に来られた方々が不快な思いをしないように、また安全を守るためにも、ある程度は害虫を駆除しなくてはいけないのです。
ですから、殺虫剤を使うときは本当に申し訳なく思いながら駆除をしています。
まとめ
人によっては『お坊さん』が少し特殊な存在に思えるかもしれません。
お坊さんのやっていることは特殊かもしれませんが、お坊さん自体はごく普通の人間であり、日頃の生活も一般的なものです。
この記事では『お坊さん』に関する質問や疑問について紹介してきました。
この記事をきっかけに、少しでもお坊さんに対して親近感をもっていただけたら幸いです。
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