- お坊さんの結婚式ってどんなカンジなの?
- 『仏前結婚式』はどんなことをするんだろう?
- お坊さんの結婚披露宴は普通の披露宴とは違うの?
お坊さんの生活って『謎』に包まれていると思いませんか?
お坊さんの日常生活はもちろん、仕事の内容についても分からないことが多いですよね。
そんなお坊さんは『結婚式』についても謎に包まれています。
実際に、私も何度か信者さんから「お坊さんの結婚式ってどんなことをするんですか?」と質問されたことがあります。
お坊さんの結婚式は『仏前結婚式』となるため、一般的な結婚式とは少しだけ違いがあります。
この記事では、
- お坊さんの結婚式の流れ
- お坊さんの結婚披露宴の様子
について、お坊さんである私自身の経験をもとに紹介しています。
お坊さんの結婚式について詳しく知ることができますので、興味のある方は最後まで読んでみてください。

この記事では、分かりやすいように僧侶のことを『お坊さん』と表記しています。
日本のお坊さんは結婚をします
お坊さんの結婚式について紹介する前に、念のためにお伝えしておきます。
お坊さんといえば、俗世を捨てて【仏の道】に入っているので、『結婚』なんてものには本らなら縁がありません。そのため、結婚をしているお坊さんのことを「本物のお坊さんではない!」と否定的に見る人もいます。
しかし、日本のお坊さんは結婚を黙認されているんです。
お坊さんの結婚については、『お坊さんは結婚をしてはいけないのか。お寺はどうやって継承されるの?』の記事で詳しく解説していますので、興味のある方は読んでみてください。
結婚が黙認されているおかげで、日本のお寺は『世襲制』のところがほとんどであり、これによってお寺はより地域に密着した運営が可能となりました。



逆に【悪いお坊さん】が寺を継ぐリスクもありますけどね。
地元の信者さんたちにとっては『顔なじみの一家がお寺を受け継いでくれる』という安心感が大きいので、お坊さんが結婚してお寺を代々受け継ぐというのも悪いことではないと思います。
お坊さんは『仏前結婚式』を挙げる
お坊さんの結婚式と聞いても、どのようなことをしているのかなんて想像できませんよね?
日本で行われている結婚式は、大きく分けると、
- キリスト教式
- 神前式
- 仏前式
- 人前式
といったところでしょう。
そして、お坊さんの結婚式はもちろん『仏前結婚式』です。
お坊さんは何をするにも『仏様ありき』なので、結婚をするときは仏様に報告をする必要があるわけです。そして、新郎新婦は仏様の御前において【お互いに支え合い、思いやって、愛し続ける】ことを誓います。
では、その『仏前結婚式』がどこで行われるかというと、基本的には【お寺の本堂】です。
ほとんどのお坊さんは《お寺》に住んでいるので、お坊さんにとっては、お寺が【住まい】であり【修行の道場】でもあります。また、結婚後もそのお寺で生きていくわけですから、仏前結婚式の会場としては新郎の育ったお寺の本堂が最適なのです。
それに、いつも手を合わせている【ご本尊様】の前で行われるので、厳粛な雰囲気の中にもアットホーム感が漂う結婚式になるんですよね。
ちなみに、『仏前結婚式』はお寺に依頼をすれば引き受けてくれることもあります。
自分の家のお墓があるお寺、あるいはいつもお参りをしているお寺など、あなたが親近感を感じているお寺があれば、そこを『挙式場所』の候補として考えてみてはいかがでしょうか。



親近感を感じるお寺は、あなたと深いご縁で結ばれているお寺ですよ。
仏前結婚式の流れ
仏前結婚式は一般の人でも執り行えます。
しかし、同じ仏前結婚式とはいえ、やはりお坊さんと一般の人とでは違う部分があります。
ここからは、お坊さんの仏前結婚式の流れについて詳しく紹介していきます。
両家の親族紹介
結婚式が開式される前に、両家の親族が本堂の中へ移動し、まずは『両家の親族紹介』をします。
両家の親族全員が着席をしたら、まずは新郎側の親族から順番に、「新郎の父です。」「新郎の母です。」みたいなカンジで自己紹介をしていきます。
新郎側の親族全員の紹介が終わったら、次に新婦側の親族が順番に「新婦の父です。」と自己紹介をしていきます。
ここで、お互いに誰がどんな立場の人なのかを確認をすることができるんですよね。
その場にいる人たちみんなが以後は親戚同士になるわけですから、せめてお互いに【両親の顔】だけは覚えておきましょう。
新郎新婦の上堂、開式の後は法要がある
結婚式が始まる時間になると、新郎新婦が本堂に上がります。
新郎新婦が本堂に上がるときには【雅楽】の演奏を流すことが多いです。
本物の雅楽演奏をしてもらうこともありますが、多くの場合は雅楽が録音されたものを、音響機器を使って流しています。



和楽器のハーモニーの中で新郎新婦が歩いてくる様子は、何とも言えない感動がありますよ。
新郎新婦が決められた席に座ったら、司会担当のお坊さんによって開式が宣言されます。
開式が宣言されると、1番エラいお坊さんの指示に従って、新郎新婦はまず『身体を清める作法』をします。ちなみに、新郎新婦の身体は清めますが、他の列席者までは清めないことが多いです。
次に、お坊さんたちが婚姻のための法要を始めます。
婚姻のための法要というのは、お坊さんがお経を読んで、ご本尊様を称えて、これから夫婦となる新郎新婦をこれからずっとお守りいただくようにご本尊様へお願いをすることです。
新郎新婦はここで、お寺のご本尊様に向けて【お焼香】をします。
ご本尊様にお香をお供えして、まずは夫婦2人でちゃんとご挨拶をするのです。
念珠(数珠)の授与
新郎新婦のお焼香が終わったら、続いて『念珠(数珠)の授与』があります。
仏前結婚式では、式を取り仕切っている1番エラいお坊さんから、新郎新婦ともに『数珠』を授かるのですが、これが他の宗教にはない【仏前結婚式ならではの儀式】です。
お坊さんから授かる数珠については、原則として新郎新婦が自分で購入したものを事前にお坊さんへ渡しておきます。



私のときは、いつもお寺に来てくれている法衣屋さんから事前に数珠を購入しました。
場合によっては、お寺で結婚式用の数珠を売っているかもしれませんので、もしも仏前結婚式をするなら、会場となるお寺に確認をしてみてください。
渡しておいた数珠は、式の前あるいは式中に供養されて、それを1番エラいお坊さんから受け取ります。これによって、新郎はもちろん、新婦もそのお寺のご本尊様とご縁を結びます。
『念珠の授与』はご本尊様とご縁を結ぶことで、夫婦でその寺を守っていくことを決意するための儀式なのです。
指輪の交換
念珠の授与が終わると、次に『指輪の交換』をします。
これは、どんな形式の結婚式でも行われるものですよね。
指輪の交換方法は一般的な方法と同じで、事前に2人で購入した結婚指輪を、お互いに相手の【左手の薬指】へ着けてあげます。
これによって夫婦としてお互いに支え合い、共に思いやりながら生きていくことを決意します。
三三九度
指輪の交換が終われば、次に『三三九度(さんさんくど)』を行います。
これも神前結婚式で行われるものと同じです。
担当のお坊さんが、雄蝶(おちょう)と雌蝶(めちょう)と呼ばれる【日本酒を注ぐための器】を使って、新郎新婦へ順番にお酒を注いでいきます。
新郎は雄蝶でお酒を注がれ、新婦は雌蝶で注がれます。
新郎新婦は小中大の3種類の大きさの盃を順番に使って、注がれたお酒を少しずつ飲んでいきます。
お酒を飲む順番が決まっており、
- まずは小盃で、新婦⇒新郎⇒新婦の順番でお酒を飲む
- 次に、中盃で、新郎⇒新婦⇒新郎の順番でお酒を飲む
- 最後に、大盃で、新婦⇒新郎⇒新婦の順番でお酒を飲む
となっています。



もしかすると、地域やお寺のやり方によっては飲む順番が違うかもしれません。
また、他のいろんなサイトには【新郎から飲み始める作法】が書かれていました。
でも、今まで何回もお坊さんの結婚式を見てきた経験と、また私自身の結婚式のときにも妻から飲んでいましたので、この記事では私の経験をもとに書かせてもらいました。
飲み終わった盃は、下から小中大の順番で重ねられて、天に向かって【末広がり】のカタチとなります。
このタイミングで、司会役のお坊さんが、
「皆様ご覧ください。【末広がり】となっております。誠におめでとうございます!」
と言い、みんなで拍手をします。
お酒を互いに酌み交わすというのは《武家礼法》が由来となっていて、仏様の前で『夫婦となる約束をする』ことを意味します。
仏様の前で約束をするわけですから、心して飲まなければいけないお酒なんですよね。
ちなみに、お酒が飲めない人は『飲むフリ』をして、最後の一杯はほんの少しだけお酒を飲むようにしましょう。
両家による親族固めの盃の儀
結婚式でお酒を飲むのは新郎新婦だけではありません。
他の列席者、つまり両家の親族も飲みます。
みんなでお酒を飲むことによって、両家の親族が近い関係となることを約束します。これを『親族固めの盃の儀』といいます。
お酒を飲むといっても、宴会のようにワイワイと飲むわけではありません。盃に少しだけ注がれたお酒を、厳粛な雰囲気の中でじっくりと噛みしめるように飲むのです。
垂訓(すいくん)
『親族固めの盃の儀』が終わると、1番エラいお坊さんからの『垂訓(すいくん)』があります。
垂訓というのは簡単に言えば、人生経験豊かなお坊さんからの結婚生活に関するアドバイスみたいなものです。
アドバイスといっても、「お互いを尊重し、しっかりと支え合いなさい。」と、まるで定型文のようなことを言われるだけなんですけどね。
1度でいいので「エエか新郎、よう聞けよ。男っちゅうのはな・・・・・。」みたいなカンジで、エラいお坊さんからの【心のこもったマジな垂訓】を聞いてみたいものです。
誓詞
1番エラい僧侶からの垂訓を受けたら、次は新郎新婦で『誓詞(せいし)』を読み上げます。
これは、『これから2人は、仏様を心から信仰し、そして夫婦として一生懸命に生きていきます。』という内容の【誓いの言葉】を新郎新婦の2人で宣言するのです。
ちなみに、基本的に誓詞の本文はすべて新郎が読み上げます。
新婦が声を発するのは、最後の「新婦、◯◯」と自分の名前を読み上げるときだけです。
閉式
新郎新婦によって誓詞が読み上げられたら、式は終わりを迎えます。
最後に司会役のお坊さんが閉式を宣言して、列席者全員に式の終了を知らせます。
しかし、式が終わってホッとするのは、ほんの数分間だけです。
閉式の後はすぐに写真撮影となりますので、トイレはこのタイミングで急いで行かなきゃいけません。
写真撮影
結婚式が終わったら、その後はすぐに『写真撮影』です。
まずは、新郎新婦の2人だけで撮り、次に、結婚式に携わったお坊さん達と集合写真を撮ります。
そして、親族みんなで撮り、場合によっては、その後に数人だけで個人的に撮ることもあります。
これを【本堂の中】と【本堂の外】で行います。



だから、新郎新婦は写真撮影が終わらないとトイレに行けないんですよ。
仏前結婚式の場合、新婦は白無垢(和服)を着ますので、ちゃんとトイレのことを考えておかないといけないんです。
和服というのはとにかく着るのが大変なので、よほどのことがない限りは脱ぐことはありません。
ですから、結婚式で女性が和服を着る場合は、万が一のときに備えて《成人用オムツ》をはくケースもあるんですよ。
キレイな装いの新婦と一緒に写真を撮りたい気持ちは分かりますが、ダラダラと何人も続けて撮影を頼んでしまってはいけません。
もしかすると、新婦はトイレを我慢してツラい思いをしているかもしれませんよ。
お坊さんだって『結婚披露宴』もします
お寺での結婚式が終わったら、次は披露宴会場へ移動しなければいけません。
あっ、もちろんお坊さんだって『結婚披露宴』をしますからね。とはいえ、結婚披露宴というのは【新婦】が主役で、新郎なんてただのオマケです。
だから、全面的に新婦のリクエストを優先して、しっかりと新婦の『大きな晴れ舞台』を演出しなきゃいけません。



ここを怠ると一生涯にわたって文句を言われ続けます。
では、お坊さんの結婚披露宴と一般的な披露宴では何か違いがあるのでしょうか?
まず、お坊さんの披露宴は異様な雰囲気です。
なにしろ、そこらじゅうに『坊主頭』があるわけですから、一般的な披露宴会場では絶対に見られない光景ですよ。
あとは、新郎の最初の衣装が【僧衣】というのもお坊さんの披露宴ならではですね。
僧衣というのは、お坊さんが仏様の前で着ている衣服のことで、つまり【お坊さんの正装】です。新婦側の友人などは、ここで初めて新郎の『お坊さんの姿』を見ることになります。
一方、新婦の最初の衣装はというと、結婚式で着ていた白無垢(和服)というのがほとんどです。
もちろん、その後には新郎新婦ともに『お色直し』がちゃんとありますよ。お色直しからは、新郎と新婦の好きな衣装を着てもいいんですが、ほとんどの場合は、新郎はタキシード、新婦は華やかなドレスを着ています。
あとはもう一般的な披露宴の流れと同じで、
- 両家の来賓による祝辞
- ケーキ入刀あるいはファーストバイト
- 新郎新婦の経歴紹介
- 新郎新婦の友人による祝福のスピーチ
- 新郎新婦の友人による余興
- 新婦による両親へ宛てた感謝の手紙の読み上げ
- 新郎による御礼の言葉
などが行われます。
まとめ
お坊さんの結婚式というのは形式が決まっており、必ず『仏前結婚式』を執り行います。
とはいえ、仏前結婚式は神前結婚式と共通する部分が多く、三三九度、誓詞、親族固めの盃などは仏式でも神式でも行われます。
つまり、お坊さんの結婚式は神前結婚式と変わらないんです。
また、結婚式の後には『結婚披露宴』も行い、これも一般的なものとあまり変わりはありません。
違いがあるのは、会場にお坊さんが異常に多くいること、新郎の最初の衣装が『僧衣』であるということくらいです。
お坊さんの結婚式といっても、さほど珍しいことはしていないので、一般の人でも『仏前結婚式』を挙げるケースはけっこうあります。
日本人の生活の中には【仏教】に関するものがたくさんありますし、除夜の鐘とか初詣などでお寺に行く機会もあることでしょう。
だったら、日頃から馴染みのある『仏様』の前で永遠の愛を誓うのもいいんじゃないでしょうか?
仏様の安らかなお顔を見ながら厳粛に行われる結婚式というのも意外とイイものですよ♪
※こちらの記事も読まれています。