ほとんどの葬儀社には【提携している寺院】があります。
葬儀社はいろんな宗派の寺院と提携し、お客様の要望に合わせてお坊さんを手配できるようにしているのです。
ですから、日頃から付き合いのあるお坊さんがいなくても、いざというときは葬儀社にお坊さんを紹介してもらえます。
そして、じつは葬儀社との提携はお坊さんにとって非常にありがたいものなんです。
それと同時に、葬儀社やお客様に対していろいろと気を使う部分もあります。
本記事では、そんな《葬儀社と提携しているお坊さん》の実情について、現役僧侶の私が詳しく紹介しています。
葬儀社とお坊さんの関係性の一部が垣間見えますので、興味があれば読んでみてください。
この記事を書いている私『ちょっき』は、お坊さん歴30年。お坊さんに関する裏話や、人間関係の悩みを解消する内容について発信しています。
葬儀社と提携しているお坊さんもいる
お坊さんは、自分のお寺の檀家のためにいろんな供養をしています。
檀家からお葬式の依頼があれば、故人に戒名を授け、冥福を祈って一生懸命に供養をし、法事を依頼されたら施主の家まで行って供養をします。
しかし、お坊さんは檀家だけでなく『葬儀社から紹介された家』のお葬式や法事をすることもあるんです。
お坊さんの中には【葬儀社と提携しているお坊さん】もいて、より多くの家のために供養をしています。
お寺にお墓がある場合は、日頃からそのお寺との付き合いがありますよね。
しかし、他の場所にお墓がある家や、そもそもお墓自体がない家には《付き合いのあるお坊さん》がいないことが多いです。
すると、そのような家で身内が亡くなった場合、お葬式をしてもらうお坊さんがいません。
そこで、葬儀社はいろんな宗派のお坊さんと提携をし、お客様の要望に合わせてお坊さんを紹介しているのです。
これにより、お客様は安心してお葬式を行うことができ、葬儀社としては顧客満足度を上げることができるのです。
お坊さんにとって葬儀社との提携はありがたい
正直に言うと、お坊さんにとって葬儀社との提携はありがたいのです。
昨今のお寺の多くは、墓じまいが急増していたり、法事をしない人が増えているなどの原因により、お寺の収入は大きく減少しています。
そして、そのような流れは今後もさらに加速していくでしょう。
ですから、お坊さんとしてはお寺を守るためにも、何らかの方法で収入を増やす必要があります。
その方法の1つが【葬儀社との提携】です。
自分のお寺の収入がなくても、葬儀社と提携しておくことで【外からの収入】が期待できるのです。
しかも、お葬式の依頼が入れば、ある程度まとまった収入が見込めます。
こんなことを言う「お坊さんのくせに、お金のことしか頭にないのか!」という声が聞こえてきそうです。
おっしゃることはよく分かりますが、お寺を維持し、檀家のお墓を守っていくためには、どうしてもお金が必要です。
しかし、納めてもらうお布施の金額を上げたり、寄付を募ったりすると、檀家に負担を強いることになります。
ですから、檀家へ迷惑をかけずに収入を増やすために葬儀社と提携していますので、そこはご理解をいただきたいところです。
葬儀社と提携しているお坊さんが気をつけていること
お坊さんにとって葬儀社との提携はありがたいものです。
ですから、お坊さんは葬儀社に対して、そして紹介してもらった喪主様に対してもいろいろと気をつけていることがあります。
葬儀社に対して
お坊さんは葬儀社に対して、
- 絶対に遅刻をしない
- いつでも誰にでも丁寧に接する
- 葬儀社の要望を最優先させる
- 感謝の気持ちを忘れない
ということに気をつけています。
上記はごく当たり前のことですが、常に意識していないと思わぬトラブルを招くことになります。
絶対に遅刻をしない
葬儀社と提携しているお坊さんは、絶対に遅刻をしないように気をつけます。
まぁ、これはお坊さんというか社会人として当然のことなんですけどね。
例えば、お葬式のときにお坊さんが遅刻をすると、開式が遅れるのはもちろん、その後の火葬場の到着時刻にも遅れる可能性があります。
じつは、この『火葬場の到着時刻に遅れる』というのが非常にマズいのです。
最近の火葬場は時間にとても厳しく、1秒でも遅れると葬儀社スタッフは火葬場職員からメチャクチャ怒られます。
それだけでなく、本来なら火葬場では『最後に故人の顔を見る時間』が設けられているのですが、遅刻をするとそれがカットされます。
火葬場に到着してすぐに火葬なんて、そんなの遺族としては淋しすぎますし、納得できませんよね。
また、火葬場職員としても遅刻をした葬儀社に対する印象が悪くなります。
ですから、遅刻をしないよう余裕をもって火葬場へ到着するために、葬儀社は諸々を考慮してから開式時間を決めるのです。
それなのに、お坊さんの遅刻によって全部をブチ壊されたら葬儀社としてはたまったものではありません。
きっと、そのお坊さんには二度とお葬式を依頼することはないでしょう。
そんなことにならないように、お坊さんは絶対に遅刻をしないように気をつけています。
いつでも誰にでも丁寧に接する
葬儀社と提携しているお坊さんは、いつでも誰にでも丁寧に接するように気をつけています。
他の記事でも紹介していますが、お坊さんの中には問題のある人もいるんですよね。
問題のあるお坊さんは必ずと言っていいほど日頃から『高圧的な態度』です。
信者さんや業者さんよりも自分の方が上の立場だと思い込んでいるため、いつでも高圧的に振舞います。
そして、当然ながら、葬儀社はそんなお坊さんにお葬式の依頼はしません。
ですから、人として信頼され親しみを感じてもらいやすいように、葬儀社と提携しているお坊さんは常に丁寧な対応を心がけています。
《関連記事》:なぜお坊さんは問題ばかり起こすの?僧侶の不祥事が絶えない理由
葬儀社の要望を最優先させる
葬儀社と提携しているお坊さんは、原則として葬儀社の要望を最優先させます。
お坊さん側は仕事をいただいている立場なので、可能な限り葬儀社の要望に応えます。
例えば、『お葬式の依頼』というのはいつ来るか分かりません。
そして、葬儀社からお葬式の依頼が来たとき、その葬儀日程がお坊さんにとって都合が悪いこともあります。
しかし、そのような場合、お坊さんは自分の大事な予定を変更してでも葬儀社からの依頼を受けます。
とにかく葬儀社の要望を最優先させるのです。
なぜなら、一度依頼を断ってしまうと次回からの依頼が減ってしまう可能性があるからです。
葬儀社は、宗派ごとに複数人のお坊さんと提携しています。浄土真宗は4人、曹洞宗は3人、天台宗も3人みたいなカンジで。
そのため、葬儀社としては依頼を度々断られるお坊さんよりも、安定的に受けてくれるお坊さんの方へ仕事を回したくなります。
正直なところ、お葬式の依頼がなくなるのは《1件あたり数十万円の損失》となるため、お坊さんにとって非常に大きなダメージです。
ですから、ちょっとやそっとでは葬儀社の依頼を断りませんし、できるだけ要望に沿った形での供養をしています。
感謝の気持ちを忘れない
お坊さんは誰に対しても『感謝の気持ち』を忘れてはいけません。
『感謝の気持ち』を持ち続けることは、仏教を信仰する者として基本中の基本です。
そして、そんな『感謝の気持ち』は、提携している葬儀社に対しても強く向けられていると思います。
葬儀社と提携しているお坊さんのお寺は《規模の小さなお寺》であることが多いです。だからこそ葬儀社と提携しているわけですけどね。
自分のお寺の収入だけでは足りない分を、葬儀社からの依頼でカバーしている状態です。
ですから、そんな非常に重要な存在である葬儀社に対して感謝の気持ちを忘れてはいけません。
紹介してもらった喪主様に対して
お坊さんが気をつけているのは葬儀社に対してだけではありません。
葬儀社から紹介してもらった喪主様に対しても、
- できるだけ喪主様の気持ちに寄り添う
- 戒名(法名)の意味や読み方が分かるものを書面で渡す
- とにかく丁寧に供養する
- 営業活動をしない
ということに気をつけています。
できるだけ喪主様の気持ちに寄り添う
葬儀社から紹介してもらった喪主様に対しては、できるだけ喪主様の気持ちに寄り添うように気をつけています。
これはもう、お坊さんだけではなく、お葬式に携わる人は絶対に必要なことです。
喪主様と遺族は、大切な人を亡くしたことで深い悲しみの中にいます。
さらに、喪主様はお葬式に関するいろんな打ち合わせでとても疲れている状態です。
ですから、かける言葉を慎重に選び、できるだけ穏やかな口調と表情で接しています。
そうやって、思いやりをもって接していると、以後の供養のときに指名を頂くこともあります。
喪主や遺族の気持ちに寄り添うことは、お坊さんにとっても良い結果を招くということですね。
戒名(法名)の意味や読み方が分かるものを書面で渡す
お坊さんは、葬儀社から紹介してもらった喪主様に【戒名(法名)の意味や読み方が分かるもの】を書面で渡すようにしています。
お坊さんの多くは、お葬式で故人に戒名を授けるとき、喪主様に口頭で戒名の意味や読み方を説明します。
でも、しばらくすると説明された内容を忘れてしまうんですよね。
ですから、忘れてしまっても後から確認できるように書面で渡しておくのです。
じつは、私は書面で渡さなかったことを反省した経験があります。
葬儀社から依頼されたお葬式をしたときのことです。
私は、読経が終わった後で、いつものように喪主様を含む会葬者全員の前で戒名について説明をしました。
しかし、数日後、葬儀社から電話があり「先日のお葬式の◯◯様ですが、喪主様は戒名の説明を聞いていないと仰っていますが・・・。」とのこと。
私は驚きました。間違いなく会葬者全員の前で戒名について説明をしましたし、現地の葬儀社スタッフも私が説明するのを見ていたのですから。
もしかすると、喪主様はかなりご高齢だったので、私が話した内容を忘れてしまったのかもしれませんね。
このとき私は「ちゃんと書面におこして渡さないとダメなんだな」と反省をしました。
ちなみに、葬儀社と提携するにあたり『お葬式のときには戒名の意味を説明する』という約束があったのです。
ですから、葬儀社としては《戒名の説明をしたかどうか》を確認するため私に電話をしてきたのでしょう。
私はそのときの事情を説明してから、今後は書面で渡すことを伝えました。
とにかく丁寧に供養する
葬儀社から紹介してもらった喪主様については、とにかく丁寧に供養するようにしています。
あっ、もちろん他の方々にも丁寧に供養をしていますよ。
でも、葬儀社からの紹介の場合、喪主様の信頼を得るためにお坊さんとしては少し気を遣うのです。
葬儀社から紹介してもらった喪主様とお坊さんは、お葬式の当日に初めて顔を合わせます。
喪主様としては、そのお坊さんがどんな人なのか分かりませんよね。
もしかすると「このお坊さんはちゃんと供養をしてくれるのだろうか?」と少し疑っている可能性もあります。
ですから、お坊さんはとにかく丁寧に供養をし、喪主様に「しっかりと供養してくれた」と思ってもらわなくてはいけません。
このようなことから、葬儀社から紹介してもらった喪主様については、お坊さんはとにかく丁寧に供養するようにしています。
営業活動をしない
葬儀社から紹介してもらった喪主様に対して、お坊さんは営業活動をしないようにしています。
営業活動というのは『供養の依頼を、直接お坊さん(お寺)へしてもらうように促すこと』です。
葬儀社と提携している以上、お坊さんはお葬式や法事の依頼を受けるたびに葬儀社へ【紹介料】を支払います。
じつは、紹介料というのは、喪主様から頂いたお布施の《20%~40%相当》といった具合で、それなりに大きな金額なのです。
しかし、葬儀社を介さずに依頼を受ければ紹介料は発生しないため、お坊さんはお布施の全額を受け取ることができます。
ですから、喪主様に「今後は直接ウチに依頼してもらってかまいませんよ」と促すお坊さんもいるんですよね。
でも、これをやると葬儀社は怒ります。
なにしろ、葬儀社としては、紹介してあげた喪主様をお坊さんに横取りされた状態で、それ以降は紹介料が入ってこなくなるのですから。
そのため、お坊さんは営業活動したくなる気持ちをグッと抑え、以後は喪主様から指名してもらえるように努力しています。
まとめ
お坊さんの中には葬儀社と提携している人もいます。
葬儀社との提携は、お坊さんにとって非常にありがたいものです。
そのため、お坊さんは葬儀社に対して、
- 絶対に遅刻をしない
- いつでも誰にでも丁寧に接する
- 葬儀社の要望を最優先させる
- 感謝の気持ちを忘れない
などのことに気をつけています。
また、葬儀社から紹介してもらった喪主様に対しても、
- できるだけ喪主様の気持ちに寄り添う
- 戒名(法名)の意味や読み方が分かるものを書面で渡す
- とにかく丁寧に供養する
- 営業活動をしない
ということに気をつけています。
せっかくお葬式をするなら、喪主様やご遺族には「良いお葬式だった」と思ってもらいたいです。
そのために、葬儀社とお坊さんは互いに協力し合いながら、故人への敬意と遺族への配慮を込めたお葬式を作り上げています。
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