あなたは【十八番(おはこ)】という言葉を聞いたことがありますよね?
十八番といえば《得意分野》や《自信のあるもの》を指し、日常でもよく使われる言葉です。
しかし、この言葉が歌舞伎や仏教に由来していることをご存じの方は意外と少ないです。
なぜ【十八番】なのか、なぜ『おはこ』と読むのか、そしてそこにはどんな意味が込められているのか。
この記事では、【十八番】という言葉の歴史的背景と仏教的な意味をひも解きます。
私たちにとっての[本当の十八番]が分かりますので最後まで読んでみてください。
【十八番】とは何か
私の息子がまだ小学3年生のころ、私のところへやってきてこんな質問をしました。
「ねぇ、《じゅうはちばん》って何?」
私は息子が何を聞きたいのかが分からず、頭の中が一瞬フリーズしました。
どうやらYouTubeを観ていたときに【十八番】という言葉が出てきたらしいのです。
この言葉は、私たち大人には馴染みがありますが、改めて質問されると正確な説明ができる人は少ないでしょう。
【十八番】は「おはこ」と読む
私は、まず息子にこう教えました。
「それは《おはこ》と読むんだよ。その人にとって一番得意なことを【十八番】って言うんだよ。」
息子は明らかに納得していない様子で私に尋ねました。
「一番得意なことなら、十八番じゃなくて《一番》じゃないの?」
たしかに、言われてみればそのとおり。
私は息子の素朴な疑問にしっかりと答えることができませんでした。
そこで、私は後で調べてみたところ、【十八番】という言葉には仏教と徒歌舞伎の両方にまつわる深い意味があったのです。
【十八番】の意味
あなたもご存じのとおり、自分の一番得意とするものを【十八番(おはこ)】といいます。
例えば、カラオケで「この曲は彼の十八番なんです。」と聞けば、その男性の自信のある持ち歌という意味になりますよね。
しかし、【十八番】という言葉は、なぜ『十八』という数字と『番』という漢字が組み合わさって、さらに《おはこ》と読むのでしょう?
歌舞伎から生まれた【十八番】
じつは、【十八番】という言葉のルーツは江戸時代の歌舞伎にあると言われています。
【十八番】は、もともと歌舞伎の世界で使われていた用語で、とても有名な『市川團十郎』にまつわる言葉です。
七代目の市川團十郎が、自身の得意とする演目の中から特に代表的な18演目を選び、それを『歌舞伎十八番』と名付けたのが始まりです。
この十八番には《荒事(あらごと)》と呼ばれる、勇ましく力強い演技が特徴の演目が並んでいます。
例えば、
- 助六
- 勧進帳
- 暫
など、現在でも人気のある演目が選ばれました。
このように、市川團十郎が選んだ『18の得意演目(歌舞伎十八番)』が元となり、そこから【十八番=得意なこと】という意味に派生し、一般の人々にも広く使われるようになりました。
十八番を「おはこ」と読む理由
十八番が歌舞伎に由来する言葉であることはお分かりいただけたと思いますが、では、なぜ「おはこ」と呼ぶのでしょう?
これは、歌舞伎の習慣で『演目の台本を箱にしまって保管する』ということが関係しています。
名家や有名役者の十八番の台本は、他の演目とは区別して特別な箱で保管されていたそうです。
つまり、《箱入りの演目=特別な得意芸》という意味合いから【十八番=おはこ】と呼ばれるようになりました。
このように、文字通り《箱》にしまわれていたことが語源となり、「おはこ」という読み方が定着したのです。
【十八番】と仏教の関係
十八番が歌舞伎に由来する言葉であること、そして読み方の由来も説明しました。
しかし、じつは【十八番】という言葉には仏教的な意味もあるのです。
ポイントになるのは【18】という、なんとも中途半端な数字。
この数字は、浄土宗や浄土真宗で信仰されている『阿弥陀如来(あみだにょらい)』という仏様と深い関係があります。
阿弥陀如来様は、如来という最高位になる前は、法蔵菩薩(ほうぞうぼさつ)という名の修行者でした。
修行者時代の阿弥陀様は、すべての人々を救うために『48の誓願』を立てました。
その中でも特に有名なのが《18番目》の、
私のことを心から信じ、我が名を唱える者は、すべて漏れなく救い出す。
という誓いです。
この誓いは、阿弥陀様が人々を救うにあたり最重要視するものです。
つまり、48個ある誓いの中で《18番目》が最も大事であり、そこには阿弥陀様を象徴する意味もあります。
このことから、【十八番】が「最も大切なもの」や「誰にも負けない得意なもの」を意味するようになりました。
あなたの【十八番】を活かそう
あなたには何か「これは他の人には負けない」「これは自分の得意分野だ」と自信を持って言えるものはありますか?
つまり、【あなたの十八番】です。
例えば、スポーツ、料理、裁縫、コミュニケーションの能力、文章を書くチカラ、など何でもかまいません。
もしも【あなたの十八番】があるなら、それをぜひ他人のために使ってみてください。
阿弥陀様の十八番が『人々を救い出すこと』であるように、あなたの十八番によって他人を助けたり喜ばせてあげましょう。
ちょっとしたことで大丈夫です、誰かの悩みを聞く、仕事や作業を手伝う、落ち込んでいる人に声をかける。
そうやって、あなたの得意なことを誰かのために使ってあげると、それが巡り巡って、今度は誰かがあなたを助けてくれるときが来るでしょう。
みんなが他人のために『自分の十八番』を発揮して助け合うことで、お互いに尊敬や感謝が生まれます。
ですから、まずはあなたの方から十八番を使って他人を助けてあげましょう。
まとめ
息子の何気ない質問が、私にとって大切な学びとなりました。
十八番とは、ただの『得意なこと』という意味ではありません。
十八番は、あなたが誰かを助けるために使える大事な能力なのです。
ですから、あなたの【十八番】をぜひ他人のために発揮してあげてください。
それが、偉大な阿弥陀様に近づく第一歩となるでしょう。
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