あなたは、誰かの家の墓地、あるいは道路沿いに立っておられる【お地蔵様】を見たことがありますか?
お地蔵様は日本中のどこでも見かける、私たちにとって馴染みのある仏様です。
しかし、そんなお地蔵様がどのような仏様なのか、そして、なぜいろんな場所で見かけるのか、といったことを知っている人は多くありません。
お地蔵様は、いつでもどこでも私たちを見守り導いてくれて、特に『子どもをしっかり守る』といわれており、慈愛に満ちあふれた仏様なんです。
この記事を読むと、
- お地蔵様とはどんな仏様なのか
- お地蔵様が有名な仏様である理由
- お地蔵様のスゴさ
が分かります。
読み終わる頃には、お地蔵様の『ありがたさ』や『尊さ』がわかって、今後お地蔵様を見るたびに思わず手を合わせたくなると思いますよ。
お地蔵様とはどんな仏様?
あなたは【お地蔵様】と聞いて、その姿をだいたい思い浮かべることができますか?
多くの人は、お地蔵様といえば、
- 坊主頭
- 優しい顔
- 袖の長い衣を着ている
- 手に長い棒みたいなものを持っている
- 赤い【よだれかけ】をしている
みたいな姿を思い浮かべることができると思います。
多くの人が姿を思い浮かべることができるのは、それだけお地蔵様が馴染みのある仏様だということなんですよね。
お地蔵様は、多くの人がその名前を知っていて、どこにでもいらっしゃるので【身近な仏様】としてみんなに親しまれています。
そんなお地蔵様ですが、インドの古い言語である【サンスクリット語】では『クシティ・ガルバ』というお名前です。
これを和訳すると『地蔵菩薩(じぞうぼさつ)』というお名前になるんですよね。
『地蔵』というのは、
- あらゆる生命を生み出す土台となる【大地】⇒『地』
- その生命を包み込んで育む【胎内】⇒『蔵』
という意味です。
そして、『菩薩』というのは、
仏として最高位までいける実力を十分にもっていながら、私たちを救うためにあえて身近に留まってくれている仏様
のことをいいます。
要するに、お地蔵様は【何でもできて、いつでも近くにいてくれるメチャクチャ優しいお母さん】のような慈愛に満ちあふれた仏様なんですよね。
私たちは、そんなお地蔵様にこれでもかというくらい甘えており、お地蔵様もそれを優しく受け入れてくれます。
そういう仏様だからこそ多くの人に親しまれ、信仰され続けてきたのでしょう。
お地蔵様のご利益はスゴい!
お地蔵様が多くの人に親しまれ信仰をされているのは、【お地蔵様のご利益】がスゴいからでもあります。
僕が初めてお地蔵様について学んだときに「えっ、そんなに【至れり尽くせり】なの?」と思いました。
お釈迦様に代わって私たちを救ってくれる
今から約2500年前にお釈迦様が仏教を世に広めてくれました。
お釈迦様がいらしゃった頃は、その教えを聞いて多くの人が救われました。
でも、いくらお釈迦様とはいえ永遠に教えを広め続けられないので、お釈迦様が亡くなると、それ以後の人たちは教えを聞けず救ってもらうことができません。
じつは、お釈迦様が亡くなってから『56億7千万年後』に弥勒菩薩(みろくぼさつ)という仏様が私たちの前に現れて教えを聞かせてくれるそうなんです。
でもねぇ、そりゃいくらなんでも遅すぎるんですよ・・・。
というわけで、その56億7千万年後に弥勒菩薩さんが現れるまでの間、私たちを救うために舞い降りていらっしゃったのがお地蔵様です。
お地蔵様がお釈迦様に代わって、私たちを導き救ってくださるんです。
すべての苦しみの世界で救ってくれる
お釈迦様は、「私たちが今いる世界は『苦しみの世界』だ」とおっしゃいました。
そして、その『苦しみの世界』は、
- 【天】苦しみがとても少ない自由な世界
- 【人】いろんな苦しみや楽しみがある世界
- 【修羅】争いごとが絶えない世界
- 【畜生】本能のままに生きてしまう世界
- 【餓鬼】常に飢えや喉の渇きがある世界
- 【地獄】全ての苦しみを受け続ける世界
の6つの世界で構成されていると教えてくださいました。
ちなみに、この6つの世界のことを【六道(ろくどう)】といいます。
私たちは、この六道の中でひたすら生死を繰り返しており、いつまでたっても苦しみから抜け出すことができません。
そこで【お地蔵様】の出番です。
お地蔵様は、この6つの世界をあちこち行き来して、助けを求める人のもとへすぐに駆けつけてくれます。
苦しみの声が上がったところへすぐに駆けつけて、他の所で助けを求められたら、またそこへ向かって猛ダッシュです。
ですから、お地蔵様はいつも走り回っていて、座っている時間なんてほぼないんですよ。お地蔵様の仏像で【立っている像】が多いのはそのためです。
いつでもどこでもお地蔵様がすぐに駆けつけてくれるおかげで、私たちは安心して日々の生活を送ることができます。
私たちの代わりに苦しみを受けてくれる
お地蔵様はいつでもどこでも私たちを守ってくれています。
そして、時には、私たちの代わりに苦しみを受けてくれるのです。
本当だったら私たちが受けるはずの耐えがたい猛烈な苦しみを、お地蔵様が代わりに受けてくださるんですよ。
私たちはとても未熟なので、自分の知らないうちに多くの過ちを犯しています。
これらの過ちに対して、本当であればその報いとして苦しみを受けてしまうわけです、つまり自業自得ってやつですね。
その苦しみをすべて受けていると、間違いなく私たちは心身ともに壊れてしまいます。
そんなことにはならないよう、お地蔵様がスッと現れて私たちの知らない所で代わりに苦しみを受けてくれているんです。
これを聞いてどうですか?もうお地蔵様に足を向けて寝られませんよね?
どんなことでも慈悲深く受け入れてくれる
お地蔵様はメチャクチャ優しい仏様です。
未熟すぎる私たちの【たくさんの過ち】や【愚かな願い】を、どんなことでも慈悲深く受け入れてくれるのです。
それはまさに、どんなものでも吸収して優しく包み込み、その中で命を生み出し、そして生まれた命を育む『大地』そのものです。
だから、お名前に『地』が入っているんですよね。
もしも、私たちが他人を傷つけるようなことをしたり無理難題を言えば、相手はきっと怒ります。
でも、お地蔵様はまったく嫌な顔をすることなく、むしろ笑顔でそれを受け入れてくれるんです。
あなたは、そんなお地蔵様の前を素通りすることができますか?
浄土(仏様のいる世界)への道案内をしてくれる
お地蔵様って、いろんな所で見かけませんか?
道沿いとかが多いですよね?
お地蔵様というのは、浄土(仏様のいる世界)への道案内をしてくれるとされる仏様なんです。
だから、人通りの多い場所でみんなを見守って、良い方向へと導いてくれているんです。
昔の人は【お地蔵様はいつでもどこでも救ってくれる仏様】ということを知っていました。
それで、できるだけたくさんの人を救ってもらうために、いろんな場所へお地蔵様の石像を建てたんですね。
また、お地蔵様は『子どもを守る仏様』としても知られています。
外で遊んでいる元気な子どもたちを守ってもらうためにも、いろんな場所へお地蔵様の石像を建てたということです。
お地蔵様は子どもを守る
お地蔵様は、大人だけではなく『子ども』のことも慈悲深く救ってくださいます。
というか、むしろ【お地蔵様=子どもを守る仏様】と覚えておいていいくらいですね。
お地蔵様が守っているのは、【亡くなってしまった子ども】と【今も元気に生きている子ども】の両方です。
ですから、お寺には必ずといっていいほどお地蔵様がいます。
また、多くのお寺で【水子地蔵】を見かけますが、昔は今よりも流産や死産が多かったので、その子どもたちの供養のために建てられたのです。
ここからは、お地蔵様がどのようにして子どもを守っているのかを紹介します。
賽の河原にいる亡くなった子どもを鬼から守る
あなたは、『亡くなった子どもは『賽の河原(さいのかわら)』で石を積む』というのを聞いたことがありますか?
小さくして亡くなった子どもは、『親をとても悲しませたことの報い』として、三途(さんず)の川のほとりである【賽の河原】で石を積んで仏塔を作らなくてはいけない、と言われています。
ところが、せっかく子どもが石を積んで仏塔を作っても、そんな子どもを見つけてやって来た鬼が「なんだコレは!こんなものが仏塔になんかなるか!」と言って全部崩してしまうそうです。
子どもは泣きながらまた石を積んで、それを再び鬼に崩されてしまうんです。賽の河原ではこれが延々と繰り返されます。
とても残酷な話ですよね、これでは亡くなった子どもたちはいつまでたっても成仏なんかできません。
でも、大丈夫です。
賽の河原で泣いて苦しむ子どもたちをお地蔵様が救ってくれるのです。
お地蔵様の着ている衣って袖が長くてダボっとしていますよね。
お地蔵様はこの長くて大きな袖で子ども隠して、鬼に見つからないように石を積ませてあげるんです。
お地蔵様に守られて無事に石塔を作り上げた子どもは、もう2度と賽の河原に戻ることはなく成仏することができます。
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亡くなった子どもを浄土まで連れて行ってくれる
テーマパークや広いショッピングモールなどでよく聞く【迷子のご案内】のアナウンス。
小さな子どもは、すぐ道に迷ったり、目的地を見失ってしまいます。
なので、いくら「君が進むべき道はあっちだよ。」と教えてもらっても、言われた通りに歩いていくことができません。
ですから、亡くなった子どもは、自分がどこへ行けばいいのか分からなくなってしまうんです。
そんな子どもを見つけたお地蔵様は、優しい笑顔で「ほら、こっちだよ。私が連れて行ってあげよう。」と、子どもを浄土まで連れて行ってくれるんです。
だから、どんなに小さな子どもでも、お地蔵様のおかげで無事に浄土へたどり着くができるんですよね。
お地蔵様は子どもにとっても非常に頼りになる仏様なんです。
お地蔵様が赤い【よだれかけ】をしている理由
あなたが思い浮かべるお地蔵様の姿って、首に赤い【よだれかけ】をしていませんか?
多くのお地蔵様が赤い【よだれかけ】をしているのには意味がちゃんとあります。
【赤】には魔除けの意味がある
お地蔵様に赤い【よだれかけ】がかけられているのを見ると、仏様に対して失礼かもしれませんが、ちょっと可愛いですよね。
それで余計に親近感がわくんですけどね。
でも、よだれかけが赤色であるのには意味があります。
赤色には『魔除け』の意味があるんです。
これは、赤色を使って魔除けをするのは、『お地蔵様を守る』のではなく『お地蔵様にラクをしてもらうため』です。
お地蔵様はとても優れた方なので、私たちがわざわざ魔除けなんかしなくても、ちゃんとご自身で魔除けをすることができます。
でも、お地蔵様はあちこち走り回って救済をしまくっているので、とにかく忙しいんですよ。
そんな忙しいお地蔵様が【自分で魔除けをする手間】を省くために、私たちが赤色のものをお地蔵様に着せてあげて、先に魔除けをしておくのです。
赤色の【よだれかけ】には、少しでもお地蔵様にラクをしてもらって、その分だけ他の人を救ってほしい、という願いが込められています。
よだれのニオイで赤ちゃんを判別する
多くのお地蔵様はどうして【よだれかけ】を着せられているのでしょう?
お地蔵様は子どもを守る仏様なので、大勢の赤ちゃんも守ってくれています。
そして、大勢いる赤ちゃんの中から『誰の赤ちゃんなのか』ということを【よだれのニオイ】で判別するのだそうです。
子どもが生まれると、お地蔵様がすぐにかけつけてくれて、赤ちゃんをそっと抱いてくれます。
その時に、赤ちゃんのよだれがお地蔵様の着ている衣に付きます。
そして、お地蔵様が今後その赤ちゃんを守る際に、衣に付いたよだれのニオイで確認をして「あぁ、このニオイの子だね。」と誰の赤ちゃんなのかを判別するそうですよ。
ですから、昔の人は、自分の子どもをちゃんとお地蔵様に守ってもらえるように、我が子のニオイが付いた布で『よだれかけ』を作って、それをお地蔵様に着せたのです。
つまり、赤ちゃんのニオイのついた布で【よだれかけ】を作って、我が子のことを改めてお地蔵様に紹介していたわけですね。
もちろん『生きている子ども』も守っている
お地蔵様は、亡くなった子どもだけではなく、もちろん生きている子どものことも守ってくれています。
そして、お地蔵様と生きている子どもにまつわる行事もあります。
有名なところでは、8月24日に行われる『地蔵盆(じぞうぼん)』ですね。
これは、子どもの【無病息災】を願う行事で、地域の子どもたちが主体となって、お地蔵様の石像を洗ったり、お供え物をしたりして供養をします。
子どもたちが主体となり、お地蔵様に日頃の感謝の気持ちを伝えることで、今後もお守りいただけるようにお願いをするのです。
供養が終わると、お供えしたお菓子類などは子どもたちに配られます。
地蔵盆は、もしかすると子どもたちにとっては【お菓子がもらえる行事】にすぎないかもしれません。
しかし、地蔵盆を通じて【仏様とのふれあい】をすることによって、『仏様』という存在が自然と子どもの中に浸透するのです。
それが、やがて【先祖や亡き家族の供養をする】という気持ちを生み出すのです。
もしかすると、地蔵盆をすることの本当の狙いはここにあるのかもしれませんね。
まとめ:お地蔵様は慈愛に満ちあふれた本当にありがたい仏様です
いつでも私たちを優しい表情で見守ってくれている【お地蔵様】。
お地蔵様は、
- お釈迦様に代わって私たちを救ってくれる
- すべての苦しみの世界で救ってくれる
- 私たちの代わりに苦しみを受けてくれる
- どんなことでも慈悲深く受け入れてくれる
- 浄土(仏様のおられる世界)への道案内をしてくれる
といったように、いつでもどこでも必ず私たちのことを守り救い出してくださいます。
また、お地蔵様は、『子どもを守る仏様』としても知られています。
もしも、小さな子どもが亡くなった場合は、
- 賽の河原で泣いている子どもを鬼から守る
- ちゃんと浄土まで連れて行ってくれる
というように、まだ幼い子どもをしっかりと守り導いてくれます。
お地蔵様は、本当ならもっとエラい仏様になれるにもかかわらず、未熟な私たちのため、そして幼い子どもを守り救うために、あえて私たちの近くにいてくださっているのです。
しかも、いろんな苦しみを私たちの代わりに受けてくれているんですよ。
こんなに『慈愛に満ちあふれた』そして『ありがたい』仏様がいつも近くにいてくれるんですから本当に感謝しかないですよね。
あなたのお住まいの近くにも【お地蔵様】がおられることでしょう。
お地蔵様の前を通るときには、日頃の感謝の気持ちをこめて手を合わせてくださいね。