『情けは人のためにならず』と『布施』の共通点。親切にするのは誰のため?

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情けは人のためならず布施

あなたは『情けは人のためならず』という諺(ことわざ)を聞いたことがありますか?

この諺は、意味を誤解されやすことで有名です。

そして、お坊さんに渡す『布施』という言葉も聞いたことがあると思いますが、この言葉もまた意味を誤解されやすいのです。

この記事では、『情けは人のためならず』と『布施』には誤解されやすい共通の意味について紹介しています。

少しだけ自己紹介

この記事を書いている私『ちょっき』は、お坊さん歴29年以上。お坊さんに関する裏話や、人間関係の悩みを解消する内容について発信しています。

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『情けは人のためならず』の意味

私が初めて『情けは人のためならず』という諺を聞いたのは中学生の頃。

私はそれから数年間、この諺を【他人に情けをかけても、結局はその人のためにならないから良くない。】という意味だと思っていました。

しかし、それは完全に誤解でした。

『情けは人のためならず』の正しい意味は、

『人に情けをかけると、その人のためになる。しかも、巡り巡っていずれ自分にも恩恵が返ってきて自分自身のためにもなる。』

です。

例えば、相手に情けをかけることで、自分が困ったときに助けてもらえたり、仕事やチャンスが回ってきたりすることがある、ということです。

そして、この諺で注意しなくてはいけないのが、情けをかける相手に対して【見返りを求めない】ということです。

見返りを期待している情けは、打算的なものであり、それはもはや《取引》でしょう。

見返りを求めることなく、ただ相手のために行動するからこそ真心が伝わり、感謝もされます。

見返りを求めず何度も情けをかけることで、その相手との強い信頼関係が生まれ、結果として自分自身にも思わぬ形で恩恵が返ってくることもあるのです。

仏教の『布施』の意味

私は、情けをかけるというのは、仏教でいうところの『布施』に相当すると思います。

布施と聞くと【お坊さんへ渡すお金】をイメージする人も多いと思いますが、布施はそのようなものだけではありません。

例えば、

  • 困っている人に手を差し伸べる
  • 優しく微笑みかける
  • 話をしっかりと聞いてあげる

このようなことも立派な布施です。

ただし、『布施』にはとても重要なことがあります。

それは、

布施をする人が『布施をしたことを忘れてしまう』くらいでなければいけない

ということです。

布施をしたことをいつまでも覚えていると、「いろいろ親切にしてあげたのに、なぜ何もお返しがないんだ!」と不満を抱いてしまう可能性があります。

相手からのお返しを求めてしまうと、その時点で『布施』ではなくなります。

何の見返りも求めず、そして自発的に施しをすることで初めて『布施』といえるのです。

『布施』をするには『喜捨』が前提となる

仏教には『喜捨(きしゃ)』という教えがあります。

『喜捨』とは、その名のとおり【誰かのために喜んで自分のものを捨てる(差し出す)】ことです。

先ほど説明した『布施』は見返りを求めず自発的に施すことなので、それには喜んで自分のものを捨てること、つまり『喜捨』が前提となります。

例えば、子育てをするとき、ほとんどの親は子供に対して喜捨をしています。

親は子供のためにたくさんの時間とお金をかけて一生懸命に育てますが、そこに子供からの見返りを求めたりはしませんので、これはまさしく『喜捨』です。

そして、親の思いが子供に伝わり、子供が成長してから色んな形で恩返しをしてくれることもあります。

もちろん、すべての人が恩を返すわけではありませんが、大事なのは『喜捨』の気持ちを持ち続けることです。

なので、もしも困っている人がいたら手助けしてあげたり、優しく微笑みかけるなど、できる範囲で喜捨をしてみてください。

そうした行いにより、あなたが悩んだときには誰かの笑顔に励まされたり、困ったときには頼もしい誰かが助けてくれるかもしれませんよ。

『布施』をするときのコツ

『布施』をすると自分自身にも多くのメリットがあります。

人に親切にすることで良好な人間関係が築かれたり、自分の心が満たされたり、社会的そして精神的に良い影響があるのです。

しかし、他人に施してばかりだと自分が疲れてしまったり、財産が無くなってしまうこともあります。

なので、正直なところ、私は【布施は適度にするのがいい】と思っています。

では、どうすれば適度に布施をすることができるのか。

じつは『布施』にはちょっとしたコツがあります。

それは、

5分以内で解決できる布施をする

ということです。

アメリカの心理学者のアダム・グラントは「5分以内に解決できることなら何度でも手助けをするべき」と言っています。

彼の研究によると、5分以内の短い手助けであれば、手助けをする側もされる側も大きな負担がかからず何度も手助けをすることができ、それで良い人間関係が築けるという結果が出ているのです。

ですから、あなたも5分以内でできる小さな『布施』をしてみましょう。

困っている人がいたらできる範囲で手助けを、落ち込んでいる人を見かけたら優しく声がけをしてあげてください。

そうすれば自然に周囲の人々と良好な関係が築けると思いますよ。

まとめ

『情けは人のためならず』の意味は、

『人に情けをかけると、その人のためになる。しかも、巡り巡っていずれ自分にも恩恵が返ってきて自分自身のためにもなる。』

ということです。

そして、『布施』の意味は、

見返りを求めず自発的に施しをすること

です。

この2つの言葉の共通点は、見返りを求めず相手のために手を差し伸べる、ということです。

誰かに手を差し伸べるときは【5分以内でできる小さな布施】を意識してみてください。

無理をせず他人に優しく接することで、相手との良好な人間関係を築くことができ、あなたの人生も豊かになるでしょう。

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