あなたは『徹底』という言葉を聞いてどんなことをイメージしますか?
例えば、
- 厳しく管理をすること
- 最後までやり抜くこと
- 妥協を許さないこと
などでしょうか?
じつは、『徹底』というのは仏教の言葉で、《物事の本質まで貫く深さ》や《ゆるぎない覚悟》を表すものです。
この記事では、仏教の説話を紹介しながら『徹底』の意味について解説しています。
最後までやり遂げることの価値を見直すキッカケになりますので最後まで読んでみてください。
友人は『徹底』の人だった
先日、私が所属する宗派の本山から1冊の小冊子が送られてきました。
いつものように何気なく小冊子を開いてみると、ある記事が目にとまり、次の瞬間「えっ、橋本!?」と私は思わず声をあげてしまいました。
その記事を書いたのは、私の大学時代の同級生だったのです。
記事の内容は、読んでいて分かりやすく、ユニークな視点からの解説もされており、とても勉強になりました。
そして、記事を読み終えてからふと思いました、「そういえば昔から橋本は『徹底』した奴だったな。」と。
彼は学びに対する意欲がとても高かったのを覚えています。
仏教というのはやたらと難しい言葉が並ぶのですが、彼はそれらの言葉を1つ1つ丁寧に調べあげるのです。
分からないことがあれば、どんなに夜遅くなっても納得のいくまで勉強をします。
彼は、卒業論文の量と内容においても他の同級生を圧倒しており、論文の作成中に教授から「君、もうそれくらいでいいんじゃないか?」と止められるほどでした。
あれから数十年、彼は今や、我が宗派の中でも将来を嘱望される教授候補としてメキメキと頭角を現しています。
『徹底』して学ぶ彼の今後の活躍がとても楽しみです。
『徹底』の意味
『徹底』という言葉は日常でもよく使われます。
例えば、
- 管理を徹底する
- 徹底した指導
- 徹底的に調べる
など、【中途半端にせず最後までやり抜く】という意味で使われます。
じつは、この『徹底』は仏教に由来する言葉です。
仏教の『三獣渡河』という説話
仏教には『三獣渡河(さんじゅうとが)』という説話があり、文字通り3匹の動物が大きな川を渡るときの話です。
文字を見ると何かの寓話のようですが、この説話には仏教的な深い教えが込められているのです。
この説話には、ウサギ、馬、象が登場し、彼らは大きな川を渡ります。
1匹目はウサギ。
ウサギは体が軽く、水面に近い部分をバシャバシャと泳ぎます。川の深さに足が届かず、川の流れに苦戦しながらも泳ぎ進めていきます。
2匹目は馬。
馬は四つの脚が長いので、一部の場所では足が川底につきますが、深い場所では泳ぐことになり、不安定な状態で川を渡ります。
最後の3匹目は象。
象は体が大きく重いので、足をしっかり川底につけてゆっくり歩いて渡ります。
この川の深さは、悟りに至るまでの《理解の深さ》を象徴しています。
つまり、
- ウサギは、表面的な理解だけできている状態
- 馬は、《真の理解》と《迷い》の間を行き来している状態
- 象は、真理の根底まで理解し、揺るぎない悟りを得た状態
ということを意味しています。
『徹底』とは象になること
三獣渡河では、《象》が最も深い悟りに達したことを意味します。
象の足は、常に川底をしっかりと掴み、川の流れに左右されることがありません。
『徹底』という言葉は、
- 徹(とお)る⇒通り抜ける、貫く
- 底⇒川の底、物事の根底
つまり、【足が川底までしっかりと通り抜けている】象の姿を表しているのです。
ですから、徹底とは、何度も繰り返す、頑張り抜く、という意味だけではありません。
表面的なところに留まらず、物事の本質の部分にまで足を踏み入れることが『徹底』であり、それは最も悟りに近い【理想的な状態】を表す言葉なのです。
このことから、自分の【理想的な状態】になるまで全力で取り組むことを『徹底』と言うようになりました。
日常生活での徹底
私たちは何かを始めてみたものの、途中で投げ出してしまうことが多々あります。
例えば、ダイエットをしても数日で挫折したり、新しく始めた習い事も半年後には会費だけを支払う状態になったりします。
しかし、それは悪いことではありませんし、自分に合っていないことを無理に続ける必要もありません。
すべてのことを象のように徹底して進めるのは難しいです。
なので、興味のあることや、成功させたいことがあれば、まずは象になろうと心がけてみてください。
最初はできることから進めてみて、その後も『本当に興味がある』『必ず成功させたい』と思ったら、そこからは象になりましょう。
川底にしっかりと足をつけ、自分の理想とする目標に向かって最後までじっくりとブレることなく取り組んでください。
まとめ
『徹底』とは、物事を中途半端にせず、本質に至るまでやり抜くことを意味します。
それは、仏教の説話にある「三獣渡河」に出てくる象の姿です。
象は足でしっかりと川底を掴み、川の流れに負けず進むことができます。
仏教では、この象こそが、真理を深く理解し、悟りへと至る存在の象徴として捉えています。
私たちも象のように、物事を深く理解し、着実に歩んでいくことで、自分が望む【理想的な状態】へ確実に近づいていくことができます。
大切なのは、本質を見失わず、自分の歩幅で進むことです。
たとえ時間がかかっても、象のようにしっかりと地に足をつけて進めば、あなた自身の理想へと近づけるはずです。
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