- 人前だと緊張して上手く話せない。
- 今度のプレゼンが心配だ。
- 人前で話すときに緊張しない方法が知りたい。
僕は29年お坊さんをしています。
お坊さんは、お通夜や法事のときなど【人前で話す機会】が多いです。というか、人前でいろんな仏教の話をするのがお坊さんの『本来の役目』です。
人前で話すのは、慣れないうちは誰でも緊張しますが、いくつかの対策をすれば緊張が和らぎ、自分の実力を発揮できます。
この記事では、お坊さんとしての経験や考え方をふまえ、僕が人前で話すときに意識していることを書いています。
ですから、他の専門の方々が推奨されている考え方や克服法とは違うことも多いでしょう。
ただ、いつも人前で話をしている僕が日頃から実践していることを書いたので、いくらかは参考になると思いますよ。
人前で話すときは緊張するのが当たり前!

あなたは人前で話をするとき、たった数人の前でも緊張しませんか?
そこにいる人達はあなたのことをテストするわけでもないのに、ものすごくプレッシャーを感じますよね。
そして、気持ちの整理もつかないまま喋り始め、
- つっかえる
- 言葉を噛む(大事な所で噛むと悲劇)
- 次の手順を忘れる
などの失敗をし、それがまるで『大失敗』かのように感じてしまうことでしょう。
さらに、自分でも失敗を気にしているところへ仲間からイジられて、さらに恥ずかしい思いをします。
あのときの光景、あの悪夢がフラッシュバックして今でも嫌な気持ちになる。
そんな経験を一度でもしてしまうと、次にまた人前で話さなきゃいけないときは地獄です。
だから、できるだけ人前で話なんかしたくないですよね。
でも、そんな思いをしているのは、あなただけではありません。多くの人は人前で話すことが得意ではないと思います。
きっと、あなたと同じ状況に置かれたら、あなたと同じ道をたどるでしょう。
僕はお坊さんをしているので、大勢の人の前でいろんな話(法話)をしていますが、最初はやはりガチガチに緊張しまくっていました。
当時は、とにかく早くその状況から逃れたい一心で、話を聞いている人の表情や反応などをロクに見ず、話をドンドン進めてしまいました。
しかも、緊張すると焦るので、徐々に早口になっていき、それで滑舌が悪くなりますし、言葉を噛む回数も多くなってしまいます。
そんなことをしていると、自分が伝えたいことは全く伝わらず、話す方も聞いている方もただツラい時間を過ごすことになります。
今思うと、当時の僕は、
- 自分は他の人よりも【緊張しやすい】んだな
- 自分は他の人よりも【話す才能が無い】んだな
と思っていて、自分に自信がなかったんですよね。
今のあなたも同じでしょうか?
大丈夫ですよ、多くの人は『人前で話すのは苦手』で、あなたと同じように緊張します。
人前で上手に話ができる人も、最初はあなたと同じだったはずで、そこから経験を重ねていくうちにコツを掴んだというだけです。
ですから、誰だって人前で話すときは緊張するのが当たり前なのです。
上手く話そうとすると失敗する

ほとんどの人は、「みんなの前でうまく話をしなくちゃ。」と思えば思うほど失敗します。
『◯◯をしなくてはいけない』という意識が強すぎると、必要以上に自分自身に【プレッシャー】をかけてしまい、パフォーマンスを大きく下げてしまうんですよね。
ならば、逆に「別に少しくらい失敗してもいいや、命を取られるわけでもないし。」くらいに思うことができれば、あなた本来の実力が発揮できるはずです。
うまく肩の力が抜けた本当の意味での『いい加減』がベストですよ。
自分で自分にプレッシャーをかけない
多くの人は、人前で話すときの緊張を、わざわざ自分自身で作り出しているんです。
人前で話すと、すぐに緊張してしまうあなた。
もしかして、周りの人から「真面目だね」とか「几帳面だよね」とか言われたりしませんか?
日頃から何でも、
- できるだけキッチリとやりたい
- 正確に行いたい
- ベストを尽くしたい
という意識の人は、自分に対して厳しいです。
そのような人は、ついつい『◯◯しなくてはいけない』という思考になりがちで、自分自身で余計なプレッシャーを作り出しています。
なので、もっと『肩の力を抜く』ことが大事だと思います。
また、他の人に、
- 話すのが下手だと思われたくない
- 失敗するところを見られるのが恥ずかしい
というような、『周囲の人の目』を気にし過ぎてしまうことも、やはり余計なプレッシャーを自分自身で作り出します。
でも、じつは周囲の人はあなたが思っているほど『あなたのことを気にしていない』から大丈夫ですよ。
実際は、あなたが勝手に気にしすぎているだけなんです。
なので、自分で自分にプレッシャーをかけなければ緊張をしなくなります。
ソロモンのパラドックス
あなたは『ソロモンのパラドックス』をご存じでしょうか?
これは、【人間は、他人のことに関しては冷静で客観的な判断ができるが、自分のことになるとそれが出来なくなる】というものです。
あなたの周りに『人前で話すのが上手な人』はいませんか?
いつも堂々としてスムーズに話を展開しているので、きっとあなたはその人のことを「話が上手ですごい人だなぁ」と思っていることでしょう。
でも、ちょっと待ってください。
あなたは冷静で客観的にその人のことを「すごいなぁ」というふうに見ています。
でも、あなたが「すごいなぁ」と思って見ているその人も、もしかすると、本人にとっては【心臓バクバクの緊張状態】なのかもしれませんよ。
つまり、あなたが他人を見て「すごいなぁ」と思っているように、他人もあなたが話している姿を見て「すごいなぁ」と思っているんじゃないですか?ということです。
あなたは「うわ〜、緊張するわ〜、失敗したらどうしよう。」と思っていても、実際のところ他人はそのことに気がつきません。
結局、あなたが思っている以上に、他人からは『上手く話ができている』ように見えているのだと思いますよ。
だから、そんなに心配しなくてもいいんです。
人前に出れば、あなただけではなく、誰だって緊張しますし、そんなに上手く話なんてできません。
だって、それが人間の習性なんですから。
ですから、緊張することを【仕方のないこと】として受け入れ、上手く話すことを良い意味で諦めてしまいましょう。
ベテランでも普通にヤラかします
人前で話すことは、数をこなせば次第に慣れてくるものです。
しかし、それはあくまで『慣れてきた』だけであって、完全に緊張しなくなるわけではありません。
相変わらず、それなりには緊張しますし、もちろん失敗もします。
僕にはいつもお世話になっている先輩のお坊さんがいて、その人は30年以上お坊さんをしているベテランです。
僕はその人から、今までたくさんのことを教わってきました、そして『ベテランでも緊張する』ということも。
とある法要で、その先輩と一緒にお勤めをすることになりました。
僕は、先輩がどのように法要を進め、どのような話をするのか楽しみにしていました。
ところが、先輩はお話をするの中でずいぶんと【噛んだ】のです。
先輩とは以前にも何度か一緒にお勤めをしていますが、いつもスラスラとお話をしておられましたので、本来はお話が上手な人なのです。
おそらく、そのときは序盤でちょっとした言い間違いをしたので、それで少し焦ってしまい、そのまま崩れてしまったのかもしれません。
僕よりずっと先輩でも、時にはそのような失敗をするのだな、と先輩には申し訳ないですが安心をしました。
このように、人前で話すことをたくさん経験して慣れているはずの人でさえも、時にはヤラかすのです。
噛んだ後はゴミ箱へ♪
ある漫才コンビが、テレビ番組の中でネタを披露していました。
そこで、ボケ担当の芸人さんがセリフを噛んでしまいました。
それを見たツッコミ担当の芸人さんが、すかさず「はい、噛んだ後はゴミ箱へ♪」と言って、芸人さん2人揃って《噛み終わったガムを捨てる仕草》をしたのです。
とてもタイミングが良く、失敗を笑いに換えてしまうとてもよくできたリカバリー方法だなと笑ってしまいました。
もしかすると、セリフを噛んだことも、わざとやっていたのかもしれませんけどね。
でも、これは緊張時にはイイかもしれませんよ。
あなたも、もし話の途中で何か失敗をしてしまった時は、このセリフを自分の心の中で言えばいいのではないでしょうか?
失敗をしてしまったものは仕方ないので、その失敗を引きずらないように、スパッと諦めて次に進むことを考えた方がいいんです。
先ほどの先輩は、噛んだ後にゴミ箱が見つからなかったのだと思います。
あなたは、もし何か失敗をしても、心の中で「はい、噛んだ後はゴミ箱へ♪」と言って、さっさと次に向けて気持ちを切り替えてしまいましょう。
ちなみに、『諦める』という言葉は、仏教では『明らめる』というふうに解釈し、それは【事実をそのまま受け入れること】を意味します。
つまり、失敗してしまった事実をそのまま受け入れて、さっさと次に向かって気持ちを切り替えましょう、ということです。
仏教でも芸人さんと同じように、あなたの失敗はあなたのゴミ箱へ捨ててしまえと教えているのですね。
できるだけ失敗をしないために

人前で話をするときに失敗をしても、そんなの気にしなければいいんです、誰だって緊張するものなんですから。
でも、もしも失敗を回避できるのなら、それに越したことはないですよね。
できるだけ失敗を回避するには、ある程度の【覚悟】と【準備】をしておいた方がいいでしょう。
これは何においても言えることで、『備えあれば憂いなし』ということですね。
スマホの自撮りで練習
あなたは『自分がどんな話し方をしているか』を自分で見たことがありますか?
もしも無ければ、一度【自分が話をしている姿】を確認してみるといいですよ。
正直に意見を言ってくれる友人に聞いてみるのもいいですし、ビデオカメラで撮影して自分で見てみるという方法もあると思います。
もしかすると、初めて見たときは悶絶するレベルの恥ずかしさかもしれませんが、それでも目をそらさずに現実を見つめてください。
あなたが想像していたよりも『意外と自分はちゃんと話ができていた』ということがわかると思いますよ。
そうなんです、アレもコレも失敗したと思っているのは【あなただけ】で、他人から見ると小さな失敗なんか気が付きません。
まずは、自分が意外にちゃんと話せていることを知って、自分のチカラを自覚してください。
それから、人前で話す練習をしてください。そして、できれば、何回か練習したら再び自分の話す姿のチェックをしてみてください。
きっと、前よりも間の取り方や話すテンポなどが上手くなっているはずです。
ただ、何度も仲間に見てもらうわけにもいかないですし、ビデオカメラをいちいち準備するのも面倒です。
そこで、誰にも迷惑をかけず、ビデオよりも簡単に録画できるのが『スマホ』です。
スマホのムービー録画の機能を使えば、いつでもどこでも話す練習ができます。
スマホでムービーを自撮りして、自分の話す姿の改善点を見つけ出し、それを意識しながらもう一度練習します。
ここまでしっかりと練習をしていれば、大きな失敗はしないでしょうし、「もう大丈夫だ」と少し自信もついているでしょう。
緊張していることを客観的に受け入れる
さて、いよいよ人前で話すときが来ました。
本番を目の前にしたあなたは、「人前に立てば緊張するのは仕方ないことだ、そのためにいろいろと準備もしてきた。」と頭では分かっているのに心臓はバクバクしてしまいます。
そうなんですよね、緊張は人間の本能レベルの反応なので、そう簡単には制御できないんですよ。
そんなときは、本能レベルの反応に逆らわないようにしましょう。
反対に、「うわ〜っ!今の自分、変な汗が出てるし、心臓がバクバクしてるし、これはメチャクチャ緊張してるわ〜。」と、あえて自分に緊張していることを意識させてみてください。
でも、ただ意識させるのではなく、
- 緊張状態だと心臓がバクバクしますが、これは、これから来るであろう『恐怖』に対して身体が準備をしている状態なのです。
- やがて来る『恐怖』に備えて、いつでも活動できるように、全身に血液を送り出し、身体中の細胞に新鮮な酸素を行き渡らせているのです。
というように、自分自身に細かく説明していくのです。
今の自分の状態を自分自身に向けて客観的に説明することで、論理的で冷静な思考が戻り、緊張が緩和されます。
簡単にいうと、緊張をそのまま客観的に受け入れてくださいということです。
本番前に感謝したいことを3つ思い出す
緊張したときは、その場ですぐに『感謝したいことを3つ思い出す』ということをしてみるといいですよ。
アメリカの心理学者の研究によると【人は、感謝の気持ちを持つことで心に余裕が生まれる】という結果が出ているそうです。
感謝をする対象は『人』だけではなく、動物、物、天候、現象など何でもかまわないとのこと。
例えば、
- 落ち込んでいるときにペットがそばで寄り添ってくれたことへの感謝
- 楽しみにしていたゴルフ当日が快晴だったことへの感謝
- 急いでいるときに信号にまったく引っかからなかったことへの感謝
など、何でもいいので【感謝を3つ】思い出してください。
感謝を3つ思い出すことで心に余裕が生まれ、自然と緊張も和らぎます。
緊張が和らげば、あなたの実力がしっかりと発揮できるでしょう。
最初に結論を言ってしまう
僕は人前で話をするときは、最初に【これから話す内容の結論】を話すといいですよ。
人間は、しっかりと集中して話を聞いていられるのは長くても【5分】程度なのだそうです。
そうです、たったの【5分程度】です。高級なカップラーメンが出来上がるまでの時間とほとんど同じ。
ついさっき話が始まったと思ったら、もう飽きてしまっている、みたいな感覚ですよね。
でも、言われてみると確かにそうかもしれません。お通夜や法事のときに話をしていても、ウンウンと聞いてくれるのは5分くらいのものですから。
となると、余計なことを話しているヒマはなく、結論(伝えたいこと)は最初の5分間のうちに言うのが得策です。
ダラダラと話を続けて何も伝わらないよりも、伝えたいことを最初にをズバッと結論として言っておけば、最低限のことは伝わるでしょう。
それに、あなただって最初に重要なことを伝えてしまっておけば、後は話をロクに聞いてもらえなくても特に問題はないですよね?
そして、最初の5分間に全神経を集中して話をすれば、その後はもう気楽なものでしょう?
気楽になれば緊張もほぐれて、話の全体がスムーズに展開されていきます。
そうなれば、最終的にあなたの話はとても上手なものだったという印象が残ります。
できるだけ話題を2つまで絞る
人前で話すときは、できるだけ話題を2つまで絞る方がいいと思います。
最初のたった5分間で言いたいことを伝えるには、いくつも話題を詰め込むのは無理があります。
話を聞く方だって、いくら集中して聞くことができる時間とはいえ、最初にいくつもの情報をババっと言われたところで覚えきれません。
ちゃんと内容を覚えていられるのは、多くても【2つ】が限界ではないでしょうか?
1つの話題に対して持ち時間が2分半です、しっかりと要点をまとめて話をするには、これくらいの時間が必要ではありませんか?
僕はこれでも意外とキビシイと思っています。
また、短い時間なのにいくつも伝えることがあると、あなた自身がパニックになってしまいそうです。
パニックになってしまうと、ほとんど何も伝わりませんし、あなたが変な汗を大量にかいてしまうだけです。
ですから、人前で話すときの話題の数はできるだけ少なくした方が無難です、多くても2つに抑えておきたいところ。
2つの話題の要点だけを最初に伝える、というような原稿を作成してみてください。
また、本番で2つの話題について要点を話したら、最後にもう一度「今日みなさんにお伝えしたいのは、◯◯ということ、そして、□□ということ、この2点でした。これだけを覚えておいてください。」と念を押しておきましょう。
とにかく【ゆっくり】と話す
人前で話すときは、とにかく【ゆっくり】と話すことを心がけるといいですよ。
先ほど、話すときに緊張をすると早口になると言いました。
早口になると、言葉を【噛む】リスクが一気に跳ね上がります。
ということは、逆に【ゆっくり】と話すことができれば、言葉を【噛む】リスクが減りますので、自然とスムーズに話を進められます。
しかも、あなたが【ゆっくり】と話すと、周囲の人からは『余裕がある』ように見えるのです。
面白いものです、話す方は失敗しないように【ゆっくり】と話しているのに、聞いている方にはそれが『余裕』に見えるんですから。
実際のところ、話す本人もゆっくりと話すことで、先の手順を考える時間ができるので、本当に余裕が出てきます。
そういえば、ある有名な『戦場カメラマン』の方がおられまして、この方はとても【特徴的な話し方】をします。
何が特徴的かというと、この方はとにかく【ゆっくり】と話をするのです。しかも、かなりの【ゆっくり】なんです。
不思議なことに、そのような話し方でも、聞いている方はイライラせず、それどころか、いつの間にか話に引き込まれてしまうんですよね。
試しに『戦場カメラマン ゆっくり』などのワードで検索してみてください。
昔から『急いては事を仕損じる』といいますが、人前で話すときも同じで、急いては大事なメッセージが伝わりません。
緊張していると、自分ではゆっくりと話しているつもりでも、実際は普段より早口になっています。
ですから、意識的に《結構ゆっくりなペース》で話すくらいで丁度よいかもしれません。
とにかく【ゆっくり】と話をするように心がけてみてください。
まとめ
人前で話をするときに緊張してしまうのは、『上手く話さなくてはいけない』と自分で自分を追い込んでいることが原因です。
そして、それはあなただけではなく誰だって同じことをしてしまうんです。
だから、もう『上手く話そう』とするのはやめましょう。それはかなりの逆効果となってしまいますから。
自分なり準備をしたら、あとは開き直って本番に臨んでください。
話の途中で少しくらい失敗してもいいじゃないですか、そんな失敗はあなたの心の中のゴミ箱にポイっです。
そもそも、聞いている人のほとんどは、その失敗に気づくことさえありません。
ですから、緊張によって多少のミスをしたところで、話の要点さえ最初に言っておけば、それで話の内容は十分に伝わります。
あまりアレコレ考えずに、もっと気軽にいい加減に臨んでください。
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